保険の解約のために考えたこと

経済的自由へ近づくためにすべきことの一つとして、固定費の見直しがあります。
保険も見直すべき固定費の一つです。

ですが、長年保険料を払い続けてきた保険を解約すると損だと感じたり、保険を継続するのと解約するのとでどちらが良いか分からない、という人も少なくないでしょう。
今回、僕自身が保険を見直した際にどう考えたかをご紹介します。
僕の状況や考え方は皆さんのそれとは全然異なると思いますが、保険を解約しようか迷っている方は一例として参考にしていただければと思います。
検討の結果、僕は60万円損切りしました。

まず、僕が契約していた保険を次の表に挙げます(一応商品名は伏せておきます)。

No.保険保険料契約日
最終払込期月
内容解約/継続
1ドル建
終身保険
月60.20USドル2008年7月
2044年6月
・積立利率変動、最低3%保証
・死亡保険50,000USドル、
 積立利率に応じた+αあり
2020年7月に解約
2ドル建
終身保険
月88.98USドル最終払込済
(10年間)
・積立利率変動、最低3%保証
・死亡保険30,000USドル、
 積立利率に応じた+αあり
とりあえず
契約継続
3終身医療
保険
月5,196円2009年1月
2044年12月
・入院一日4,000円
・手術1回40,000円
・最終払込まで生存の場合
 保険料総額相当が還付
2020年7月に解約
4終身保険年447,108円2013年
2022年
・最低積立利率1.85%
・死亡時、高度障害時
 850万円
契約は継続
最終払込後に
解約予定
いずれも一部の界隈でぼったくり保険と称される貯蓄型(積立型)保険です…

次に、解約を検討するにあたっての前提条件、僕の現在の状況です。

 (1) 2年分の生活防衛資金あり
   2年間は無収入でも現在の生活水準を維持できる程の貯金があります。
   もし、怪我・病気などで医療費がかかっても高額療養費制度と生活防衛資金が
   あるので、医療保険が無くても1年くらいはやっていける見込み。
    ※ 高額療養費制度:簡単に言うとどんなに高い医療を受けたとしても自己負担額は
              月に10万円程度(収入による)で済むという公的制度
 (2) 独身(結婚予定なし)、両親は十分な老後資産あり
   僕の死亡保険がなければ金銭面で生活に困る人はいません。
   資産運用のつもりで契約した終身保険3つは、保険という面では不要。
 (3) 投資経験あり
   預金しか知らなければ利率3%は十分高いですが、アメリカの主要株価指数S&P 500の
   伸び率を知っていると大したことなく感じます。
   保険会社が3%を保証するということは、それ以上に投資で儲けているということ。
   自分で投資した方がいいでしょう。

今回保険を見直すきっかけになった本と動画を紹介します。
病気や怪我をした時のための高額療養費制度や公的保険について説明されています。
この中で貯蓄型保険(積立型保険)はぼったくりと言われていますが、自分の場合を精査してみると…ぼったくりですね。



それでは一つずつ見ていきましょう。

No.1 ドル建て終身保険(月60.20ドル)

ドル建ての積立利率変動型の生命保険で、払込は2044年まで。
積立利率は最低3%保証、より利率が高ければ保険金も解約返戻金も相応に高くなるというもの。

社会人1年目に勧められるまま契約しました。
積立利率が最低の3%でも30年で解約返戻金が元本を超えますし(ドルでですが)、そのうち結婚したら受取人を妻か子を保険金の受取人にすれば良いかと(そんな予定はない)。

で、この積立利率は契約当初(2008年7月)は4.5%近くあったのが徐々に下がっていき、現在(2020年7月)は3.2%を割っています(利率は円)。
一方、アメリカの株価指数のS&P 500の同一期間の平均利回りは7.66%(円ではなくドルで)ほど。
大きな差ですね。

保険金はもはやどうでもいいので、まず解約した場合の損がどれほどかを見ていきます。
以下に検討時点から最終払込までの支払保険料と解約返戻率を示します。

年月支払累計
[円]
支払累計
[ドル]
返戻率
(利率3%)
返戻率
(利率4%)
返戻率
(利率5%)
備考
2020年6月889,3488668.8079.3%85.291.7
2020年7月
検討時点
898,3488,729.00???返戻率を2020年6月の利率
3%と同じとした場合、
-1,807ドルの損
実際の返戻金は7,133.07ドル
(81.72%)で-1,536ドルの損
2024年6月(1,201,094)11,558.4085.2%94.1%104.1%
2029年6月(1,587,578)15,170.4090.1%103.7%119.6%
2034年6月(1,974,062)18,782.4096.4%114.5%136.4%
2039年6月(2,360,546)22,394.40103.0%126.6%155.5%
2044年6月
最終払込
(2,747,030)26,006.40110.2%139.8%177.2%
解約時の返戻率(契約時のシミュレーション資料より)
※ 2024年6月以降の「支払累計[円]」は、1ドル107円として計算

検討時点の正確な返戻率は分からなかったので、とりあえず79.3%で約7,000ドル(約74万円)返ってくる(1,807ドルの損、1ドル107円とした場合は155,000円ほどの損)と見積もりました。
解約返戻金の損は小さくないですが、保険契約を続けた場合は今後200万円ほど必要です。辛い。

次に、保険を解約して保険料とほぼ同じ6,441円(=60.20ドル×107円/ドル)を2020年8月から毎月積み立て投資(年利5%)に回したとしましょう。

年月元本[円]評価額[円]
(年利5%)
利益 [円]利益率 [%]
2024年6月302,727332,90830,1819.97
2029年6月689,187861,673172,48625.03
2034年6月1,075,6471,536,525460,87842.85
2039年6月1,462,1072,397,827935,72064.00
2044年6月1,848,5673,497,0911,648,52489.18

この場合は10年(2029年6月)で損した分を取り戻せます(年利3%の場合は12年ほど)。
解約返戻金も投資に回せばもっと大きなリターンも期待できます。

というわけで解約して投資に回した方が良いと判断しました。
この保険の解約返戻金はドルと円を選択できるので、ドルを選択して米国株投資に回すことにします。

No.2 ドル建て終身保険(月88.98ドル)

No.1と同じくドル建ての積立利率変動型の生命保険で、こちらの払込は10年で完了しています。
今後保険料の負担はありません。

支払累計[円]支払累計[ドル]
1,076,13910,677.60
※ 払い込み完了
経過年数返戻率(利率3%)返戻率(利率4%)返戻率(利率5%)
10年91.2%97.1%103.4%
15年102.0%114.3%127.9%
解約時の返戻率(契約時のシミュレーション資料より)

契約から12年(2020年7月時点)がたったところですが、返戻率が分かりません。
積立利率が4.5%から3.2%で推移してきていることを考えると95%、10,144ドルほどだと思います。
この場合、今解約すると6万円ほどの損になります。

解約するか少し迷いました。
No.1の解約金7,000ドルを一気に投資に回すのも怖いので、時間分散を図って少しずつ株などを買っていくつもりです。
となると、今この保険の解約金をもらっても持て余しそうです。
これ以上保険料はかからないので、もう少し預けて投資戦略を考えておきます。

No.3 終身医療保険

当時は深い考えもなく、何かあった時のために入院保障とかあった方が良いなと、保険営業の勧めのままに契約しました。
高額療養費制度とか何も知らなかったのですね。

今後、何回病院のお世話になるか分かりませんが、高額療養費制度を使って月最大10万円弱の負担を10ヶ月程度で計100万円あれば大丈夫と仮定しましょう。
以下に保険の支払額と解約返戻金を示します。

年月支払累計[円]解約返戻金[円]解約時の損益[円]
2020年7月
(検討時点)
722,244想定:127,777
実際:128,704
想定:-594,467
実際:-593,540
2024年12月997,632177,776-819,856
2029年12月1,309,392233,331-1,076,061
2034年12月1,621,152288,886-1,332,266
2039年12月1,932,912344,441-1,588,471
2044年12月
(最終払込)
2,244,672(支払累計額相当)
※ 保険証書記載の例によると解約返戻金は1年ごとに+11,111円でした

検討時点で解約すると60万円の損。貯金していれば72万円ほど貯まっていたことに。
これまで健康だったから言えることかもしませんが、貯金しておけばよかったと。
最終払込までに合計150万円必要ですが、先に書いた通り今後100万円の医療費が必要と考えると、払い続けるのがばかばかしく思います。

次に、保険を解約して保険料と同じ5,196円を毎月積み立て投資(年利5%)に回したとしましょう。

年月元本[円]評価額[円]
(年利5%)
利益 [円]利益率 [%]
2020年12月25,98026,1932130.82
2024年12月275,388306,68731,29911.37
2029年12月587,148743,779156,63126.68
2034年12月898,9081,301,631402,72344.80
2039年12月1,210,6682,013,608802,94066.32
2044年12月2,244,6722,922,2911,399,86391.95

もちろん投資で年利5%を続けられる保証はありません。
が、あと20年ほど(2039年12月時点)で保険料の解約で損した60万円を取り戻して20万円プラス、最終払込の2044年まで続けるとさらに60万円プラスの可能性があります。
(ちなみに年利3%としても2044年12月時点で利益は約70万円です。)

一方、保険料を払い続けても返ってくるのは支払った額と同じ。
あと150万円も払い続けるのも憂鬱ですし、そのお金を投資に回せば解約により損した分を取り戻してなお利益が得られる見込みがある。
というわけで解約します。

No.4 終身保険(低解約返戻金型)

年45万円という高額なこの保険、2013年当時に契約を決めた理由は次の2点です。

  • 年利1.85%は銀行預金より全然良い
  • 10年支払いを頑張れば、大きなリターンとなるなら乗らない手はない

保険ではなく資産運用として考えていました。失敗です。
投資を知っている今なら年利1.85%なんて大したことないと思いますし、少なくとも10年までは損するから解約しにくい=資金が拘束されるので投資に回せない。

では、解約するかどうか、考えていきましょう。
次の表をご覧ください。

経過年数払込累計解約返戻金損益年利1.85%運用
(複利)
年利5%運用
(複利)
年利1.85%運用
(単利)
7年目3,129,7562,362,404-767,3523,308,9133,640,3573,303,453
8年目
今年ここ
3,5768643,020,441-556,4233,817,2364,269,4833,808,461
9年目4,023,9723,754,499-269,4734,334,9634,930,0654,321,740
10年目
最終払込
4,471,0804,561,36990,2894,682,2685,623,6764,843,291
11年目4,471,0804,625,754154,6744,952,2205,904,8604,926,005
12年目4,471,0804,690,954219,8745,043,8366,200,1035,008,719
15年目4,471,0804,891,167420,0875,328,9807,177,3945,256,861
20年目4,471,0805,238,467767,3965,840,4899,160,3675,670,431
25年目4,471,0805,599,3111,128,2316,401,09711,691,2196,084,001
30年目4,471,0805,971,9151,500,8357,015,51514,921,2886,497,571
右3列は支払いと同じ積み立て条件(10年目まで447,108円積立)で資産運用シミュレーションしたもの

もうすぐ8年目(8回目)の払い込みという時期なのですが、今解約しても76万円の損、8年目、9年目で解約しても結構な額の損です。これは痛い。
この損を投資で取り戻すのは解約返戻金を年利5%で回しても6年かかります。
一方であと3年我慢して10年目の最終払込を済ませれば元本を取り戻せます。
というわけで最後まで払うことにします。
しかし、重たい枷を背負った気分です。あと3年も資金拘束を受けるばかりでなく、150万円もの負担が残っているのですから。

ところで積み立て条件(10年間447,108円を毎年積み立て)で運用するとどれくらいのリターンが得られたか、同じ表にシミュレーションしてみました。
解約返戻金が年利1.85%で”単利”運用したときにも劣るってどういうことなのか。
最後まで払い込んだら早々に解約です。

まとめ

僕が保険を解約するにあたってどう考えたかを書いてみました。

当然、人それぞれの状況、価値観などで必要な保険は異なります。
僕の場合は死亡保険は今のところ必要ありませんし、保険で積み立てるより投資に回した方が(元本割れのリスクがあるけど)良いと思っています。
でも小さいお子さんがいる方は死亡保障のある保険に入っておくべきでしょうし、投資はリスクがあるので最低利率保証がある保険の方が良いと思われる方もいるでしょう。
また、僕は医療保険を解約しましたが、解約したとたんに(タイミング悪く)病気になってしまい、解約しない方が良かったとなる可能性もあります。
つまり、この判断が正解かわかりません。

いずれにせよ、高額療養費制度や障害年金などの制度があることを知り、そもそも自分に保険は必要か、何のためにどんな保障が必要かを考えた方が良いです。
僕は調べもしませんでしたが、積立型と同程度の保証が得られる掛け捨て型保険もあるようです。それなら掛け捨て型保険を選んで、積立型との保険料の差額を投資に回すのも人によっては良いかもしれません。

保険を解約しようかどうか迷っている方の参考に少しでもなれば幸いです。

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